Chapter 0

AIを入れた会社で、いま起きていること

AI化を号令した会社が、なぜ変わらなかったのか

P1: ある月曜の朝礼。「金曜に頼んだ提案書が、月曜の朝一に届いてた。担当は不在で、若手とAIだけで仕上げたらしい。うちもAIをやるぞ!」と社長が宣言し、社員たちは顔を見合わせる

P2: 田村部長55歳、AIは触ったことがない。検索窓に「AIとは」。隣の席のコードだらけの画面を覗いて、そっと目をそらす

P3: 営業の佐藤はたまに使う。メールの文面を直してもらって「お、いい感じ」。でも見積もりはこれから3時間。仕事そのものは何も変わっていない

P4: DX担当の中西は自動化が組めて「すげー!」と持ち上げられる。でも一人になると「会社の仕事のやり方は何も変わってないんすよね」

P5: 号令を受けて佐藤がAIで見積もり資料に挑戦。「違う違う、単価はこっちの表で…」と指示を足していく

P6: 指示、修正、指示、修正。できたけれど、かかった時間はほとんど一緒。AIは働いた。でも佐藤もずっと働いていた

P7: 毎日使う企画の青木も、頼むたびに経緯をゼロから説明。長々と説明しても、思ったものと違うものが出てくる

P8: 青木は単価の変更をチャットで共有した。既読もついた。なのに数日後、佐藤は「え、単価変わってたんですか…?」。流れたチャットを、誰も見返していなかった

P9: 青木が佐藤に「納期の書き方はいつもの様式でって言ったよね」と直し方を教える。次の週も、その次の週も、同じ説明をしていた

P10: 休憩スペースで4人がぐったり。使う人も使わない人も、全員別々の場所で止まっていた。廊下から社長の「AI化はどうなっとるんだ〜」

P11: 例の「引き継ぎなしで仕事が回る」山口製作所を3人で訪問。依頼は仕事ごとの箱に一行書くだけ。説明も、資料の受け渡しもない

P12: 一行が届いた先には、これまでのやり取りも資料も現状も全部入っていて、AIが読んで動き出す。自動化を組める中西がいちばん驚く。「決まった処理じゃない…判断ごと任せてる…」

P13: フロアには資料づくりの気配も会議の予定もない。「なんで会議なしで回るんですか!?」「ゴールを見れば、進み具合は全員いつでも見えてますから」

P14: 「上の3つは、AIが夜のうちに判断して動いた分です。朝、私が見るのはこの1件だけ」。決まった作業だけでなく、その場の判断まで任せていた。中西が絶句する

P15: 種明かし。仕事の箱に経緯が揃っているから、誰が受けてもすぐ進む。道具は同じ、変えたのは仕事の置き方。「仕事の構造から教える研修を、全員で見たんです」

P16: 帰社して、同じ研修を全員で見る。社長も部長も。そして仕事の置き方から変えていく

P17: 青木の毎回の説明が消えた。触ったことのなかった部長も「案内状、進めて」で動いた。会議のずれも消え、社長は進み具合を画面で見ている

P18: 青木から佐藤への引き継ぎが「このゴール、お願いします」の一言で終わる。「私たちが見た研修が、いまあなたが読んでいる、この講座です」

これは実際に起きています。アドネス株式会社では、ゴールと現在地を一か所に置くこの形で、1日がかりだった引き継ぎ作業が30秒になりました(経緯はnoteの実例記事で公開しています)。

この講座を終えると、こうなります

「AIで何ができるのか」が、まだピンと来ていなくて大丈夫です。いまChatGPTで質問したことがある、くらいで十分です。

まず、目の前の作業が減ります。

仕事いままでこのあと
問い合わせ対応届くたびに読んで、その場で返す仕分けと定型の返信は自動。判断が要るものだけ手元に残る
記事や発信何を書くか考えて、調べて、書く何を書くかをAIが決めて、下書きまで出す
資料づくり毎回ゼロから作る「この案件、提案書まで進めて」で経緯を読んで出てくる
数字の集計・共有金曜に集めて、転記して、コメントを書く金曜17時に、増減の理由つきで届いている
書類の仕分け・転記届くたびに名前を付けて、台帳に足す自動で格納・転記。判断できないものだけ残る

ただし、ここで終わるなら、この講座を読む意味はありません。

作業が速くなるだけなら、要らない仕事まで速くなるだけだからです。1,000本の資料を一晩で作っても、誰も使わなければ会社の数字は1ミリも動きません。この講座がいちばん時間をかけて扱うのは、その先です。

いままでこのあと
仕事の現在地聞かないと分からない。「あの件どうなってる?」AIに聞けば、その場で返ってくる。 「A社の件どうなってる?」で、いまの状況と次にやることまで出てくる
報告と会議進捗を共有するための資料と、そのための会議共有のための資料づくりも、報告のための会議も要らない。残るのは、何かを決める会議だけ
引き継ぎ打ち合わせをして、経緯を説明して、資料を渡すAIに一言頼むだけ。 説明も資料集めもなしで続きが始まります。1日がかりだった引き継ぎが、30秒でした
止まっている仕事誰かが気づくまで止まったまま月曜の朝、止まっているものと、その理由が並んでいる
AIの使われ方各自がそれぞれのAIに、毎回ゼロから説明する誰のAIも、会社のいまの状況を知っている。 毎回説明しなくて済む

上の表は、下の表に行くための入口です。作業を速くするのが目的ではありません。目的は、会社の仕事の回り方が変わることです。

なぜ、そこまでやるのか。AIに、人間と同じだけの状況を渡せたときに、何が起きるかです。

今のAIはめちゃくちゃ賢いので、情報さえうまく渡せたら、優秀な人間をひとり雇う以上に価値を発揮します。 さらに、優秀な人間を雇うのと比べて圧倒的に安い金額で、いつでもたくさん働いてくれます。

足りないのは、いま社内で何が起きているかを知らないこと。それだけです。 この講座で最初から最後まで扱うのは、その渡し方です。

この会社が失敗したのは、道具ではなく仕事の置き方の問題でした。だから、この講座は仕事の構造から始めます。

進み方

道のりは、基本編6章と、立ち上げガイド、運用編1本です。仕事の構造を理解して、AIに任せられる形にして、環境を作り、自動で回し、チームに広げる。順番にやれば、着きます。

道具そのもの(Claude Codeの入れ方・使い方、AIの性質、自動化の実例)は、サブ講義に分けてあります。本編と並行して、必要になったときに開いてください。

読んでいて分からない言葉が出てきたら、サブ講義5 AI活用の用語集にまとめてあります。そして、いちばん早いのはAIに聞くことです。 「いま出てきた○○って何?」で説明してくれます。